原木と菌床ってどう違うの? -しいたけの場合

聞いたことはあるけれど、違いがいまいち分からないものってありますよね。

しいたけだと、「どんこと香信」とか「乾しと生」、「乾しと干し」とか「原木と菌床」とかが良くある疑問でしょうか。

今回は、この「原木と菌床」の違いについて、3つの違いに注目してみましょう。

あなたにぴったりなのは、原木?菌床?

ちょっと長くなってしまったので、お急ぎの方は下記目次の概要をご覧下さい。

 

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1.栽培方法の違い

実際の木を使って露地で作られることが多くより自然に近い形で栽培される原木栽培。木のおが粉と栄養や椎茸菌を混ぜてブロックにした菌床栽培には、安定した収穫ができる人類の知恵が詰まっています。

 

2.栄養素の違い

生椎茸と乾しいたけでは全然違う栄養素の構成。ですが、原木栽培と菌床栽培、生の状態では栄養素にほとんど差はありません。調べたところ、原木生椎茸の油炒めが一番栄養素を多く摂取できそうでおすすめです。

 

3.風味の違い、苦手な方へ

濃い椎茸を求める方は原木の乾しいたけ、椎茸の香りや風味が苦手な方には菌床の生椎茸がおすすめです。
テロテロした食感が苦手、という方は原木の生しいたけの中でも傘が広がっていない、丸く分厚いものを大きめに切り、水分少なめに調理してみてください。


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1.栽培方法の違い

原木と菌床の一番の違いは、その栽培方法です。

諸塚村では、どのように栽培しているのでしょう。


・原木椎茸の栽培方法

「原木」という名前の通り、木そのものに椎茸の種を打ち込み栽培する方法です。

諸塚村では、椎茸農家が15~20年育てたクヌギやコナラの木を秋の終わりに切り倒し、冬の間に乾燥させ、春が来る前に1mほどの長さに切り分け(玉切り)、椎茸菌を植菌します(駒打ち)。

倒した切り株からは新しい芽が出て、また15~20年後に椎茸の原木となるよう育てられます。椎茸農家さんは、木の根付近を見ればこの木は何回切られているか分かるそうですよ。

駒打ちが終わった原木は倒して重ねられ、菌が原木中に回るよう置いておきます(伏せ込み)。日の当たり方や湿度を保ちつつ風通しも良くする必要があり、無事椎茸が出てくるようになるまで注意が必要な作業です。

無事菌が回り、椎茸が収穫出来るようになるのは植菌してから2年目の秋(種類によっては1年目の秋から収穫出来る物もあります)。夏が終わり気温が下がると、菌の目を覚まさせるように水に浸けたり「ドン」と衝撃を与えたりすることで椎茸の発生が始まります。

玉切りされた原木は、だいたい30kg前後。木が細すぎると収穫量が落ち、太すぎると持ち上げたり移動させたりが難しくなります。駒打ちから収穫まで、原木の移動は基本的に人力。60歳を越える椎茸農家さんも多い中、かなりの重労働です。

ほだ場と呼ばれる椎茸の収穫場に1本ずつ原木を立てかけ、準備は完了。木漏れ日の下、何百、何千もの原木が並べられた光景は圧巻です。諸塚村の観光協会では、椎茸狩りの体験も受け付けていますので、気になる方は是非体験されてみてください。椎茸をもぎ取る感覚、クセになりますよ!

原木椎茸の旬は気温が下がる秋~冬。環境をコントロールすることができない露地で育てられることが多い為、寒くならなかったり雨が降らなかったりすると椎茸の収穫量はがくんと下がってしまいます。原木椎茸は特に露地栽培が多いため、年によって収穫量が増減することで、乾椎茸の価格に影響が及ぶことも。逆に、雨が降ると一斉に発生し収穫が追いつかない時もあります。価値の高い「どんこ」の状態で収穫ができず、傘が開ききったり大きくなりすぎたものは乾燥に時間がかかるため、スライスして乾燥させたりまします。

諸塚村の原木椎茸は、基本的に乾しいたけ用として栽培されるため、原木生椎茸として販売されるのはごく少数。傘の裏側がすぐ茶色くなってしまうなど、流通させるには足が速いためです。特に露地物の原木生椎茸は貴重。見かけた時には是非入手してみてください。

収穫が始まった原木は、2~3年椎茸が発生し収穫を続けることができます。収穫を終える原木の分だけ、また新たにクヌギを切り椎茸菌を活着させて収穫に備える。原木椎茸の農家さんはそうやって栽培を続けています。より天然に近い状態での栽培方法、それが原木栽培です。

最古の椎茸は倒木に偶然椎茸菌がつき発生したものを収穫していましたが、その後原木にナタで傷を付けその傷に椎茸菌がつくのを待つナタ目栽培法を経て菌を打ち込む現在の形にたどり着きました。今は、露地より収穫のコントロールがしやすいハウスでの原木栽培も少しずつ増えています。

 

・菌床椎茸の栽培方法

木のくずであるおが粉に椎茸の菌と栄養を混ぜて作られるのが菌床ブロック。諸塚村では、原木栽培で収穫を終えた原木から作られることが多いです。

椎茸菌が回った状態でブロックとなるため、すぐに収穫を始める事ができます。また、環境の整ったハウスなど施設の中で育てられることため、温度や湿度を管理し年中収穫することが可能です。

ただし、収穫は1シーズンのみ。シーズンごとに菌床ブロックを製作します。

菌床で栽培された椎茸はほぼ生椎茸の状態で出荷され、現在は乾しいたけに加工されることはほとんどありません。ただ、気候変動などで原木椎茸の数が減少する場合もあり、菌床栽培の椎茸も乾しいたけへ加工される可能性が高まっています。

菌床椎茸は気温や天気に左右されず、偶然の産物に任されていた椎茸栽培を安定させた、人類の知恵が詰まった栽培方法だといえます。

手に入りやすく季節を問わないので、日常的に使うのに便利な菌床椎茸。最近では、原木に引けを取らないものも出てきています。
菌床の乾しいたけは海外産のものが多く、日本ではあまり作られていません。生椎茸を見かけたら、菌床と原木の食べ比べてみてください。味や食感の違いを感じられるかも。

 

2.栄養素の違い

原木と菌床の生しいたけ、栽培の方法がここまで違うのであれば、含まれる栄養素の量も違いそうなものですが、実はあまり差がないんです。強いて言えば、原木の方が葉酸多めというぐらい。

ちなみに、生しいたけと乾しいたけで比べると

生しいたけ→ミネラル多め

乾しいたけ→うま味とビタミン多め

という結果になりました。
参考値も多いのですが、「茹でる」と「油いため」では多くの項目で油いための方が数値が高かったので、やはり椎茸と油の相性は抜群のようです。

基本的な食品成分は、こちらを参考にしましたので気になる成分があればぜひご確認下さい。

検索結果表示

文部科学省 食品成分データベース

 

3.風味の違い、苦手な方へ

一般的には、原木椎茸の方が風味が濃く菌床椎茸は薄め、と言われています。

特に椎茸の匂いが苦手な方におすすめなのが、菌床の生椎茸。
しいたけの匂いの元は、「レンチオニン」という成分。血液さらさら効果が期待できる成分なのですが、実はこれ乾しいたけを戻すと増えてしまう香りです。
生椎茸には少なく、更に長時間煮沸すると香りが消えてしまうので、匂いが苦手…という方はお試し下さい♪

お味噌汁に入っているような椎茸のスライスの食感が苦手、という方にはぜひ原木の生椎茸を。特に傘が丸くて開いておらず、肉厚な椎茸を大きく切って味付けも水分少なめで調理するのがおすすめです。プリプリ食感で、椎茸の印象が変わるかも!

原木と菌床の違い、いかがでしたか?

栄養成分はなかなか面白い結果でしたが、「まごはやさしい」の「し」担当、しいたけ。

種類が無いように見えて結構違いがあるので、お料理ごとに種類を変えてみたりするのも楽しいです。

乾しいたけと生しいたけ、原木と菌床など手に入れば食べ比べて好みを探してみて下さい♪

 

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